[レポート] 極める – Tableauビジュアル分析 – Tableau Data Day Out 2019 #tableau
2019年05月14日、ザ・プリンス パークタワー東京にてTableauの国内カンファレンスイベント『Tableau Data Day Out』が開催されました。
当エントリでは、イベントで催されたテクニカルセッションの『極める – Tableauビジュアル分析』についてレポートしたいと思います。
目次
セッション概要
当セッションの概要及び登壇者に関する情報は以下の通り。
技術的なコンテンツがお好きなユーザの皆さまにTableauエンジニアがディープなテクニカルセッションをご提供。 人は自然の景色を見たとき美しいと思い心を動かします。それはなぜでしょうか? すべては必然的そこにありあるべくしてあるからです。 ビジュアル分析はデータを「あるべくしてある」形に視覚化することで美しく世界を解き明かす素晴らしい方法です。 ビジュアルの力を使いデータから世界を知ることで人と組織を進化させるビジュアル分析の奥義を伝授します。
登壇者:
・田中 香織氏(Tableau Japan 株式会社 セールスコンサルタント)
セッションレポート
前段
先日のゴールデンウィークの話
- 知人と車でキャンプに行った
- カーナビではなく、Google Mapのナビを使用して目的地へ移動した。
- Google Mapはリアルタイムで混雑した道を避けるルートを提案してくれる
- その際、友人が放った「Google Mapが案内するルートって、タクシーの運転手も知らない知見だよね」という一言に衝撃を受けた
- タクシーの運転手が把握している「裏道」などの知識は、数十年の業務経験があってこそである
- しかし、Google Mapを使用すれば、それらの知見が誰でも享受できる時代になっている
- 国外のUberのドライバーは、ベテランドライバーではないが、Google Mapを使って、ベテランドライバーと同じレベルのサービスを提供している
本セッションの主旨について
- 上記はあくまで例でしかない
- しかし、今後はこういった新しい仕組みを、柔軟に取り込んでいかないと、時代に取り残されてしまう
- 次々と出てくる新しい事に対して、「これをつかって何が出来るか」という思考を常に巡らせることが大事
-
今回のセッションでは、私(田中氏)の、Tableauに関わってきた6年分の経験をわかりやすく伝えていきたいと考えている
- これからTableauに関わる人全員が同じ6年分の苦労をする必要はないはず
- 6年分の経験を、このセッションに凝縮して伝えるので、皆さんには、そこからまた別の新しいことを考えてもらっていってほしい
- 実は「データ分析したい」と思ったことはない
- データを通してその先にいる人と世界を見ている…と思っている
「極める」とは?
- 一言でいうと無意識の拡大
- いかに考えずにできるか…
- 決して「難しいことができる=極める」ではない
- 言い換えると自分の肉体をどこまで伸長できるか
- 「人間は生まれながらのサイボーグなのだ」
- 上記の大きな理由の一つとして「スマホを使用しているから」というものがある
- 現代の人間は、予定やメモなどの、あらゆる細かい記憶をスマホ(デバイス)に記憶させている
- 人間の記憶の延長を技術(デバイス、スマホ)に任せている
- アンディ・クラーク氏がいうサイボーグとは「人間と技術の共生体」である
棒高跳びの話
- 走り高跳びと棒高跳びは、高さの基準が違う
- それは、棒を使ったほうが高く飛べるから
- しかし、普通の人が棒を使ったとしても、誰もがすぐに高く飛べるわけではない
- 棒(の扱い)を、自分のものにして初めて、高く飛べる
- 田中氏の中でのTableauは、上記でいう「棒」と同じ
- 「まず、このディメンションをドラッグアンドドロップして〜」等のことは、全く意識せずに操っている
- それは、棒を使ったほうが高く飛べるから
- こういった境地にたどり着くにはどうすればいいか
- ひたすら修練し続けるかない(とことんやり続ける)
- 数回程度やっただけでは不可能
- 自転車に乗る練習と同じ
- Tableauもずーっと使い続ける必要があると考える
- この境地まできて、初めて「当たり前のことを取り戻すことができる」
Taskを忘れない〜Visual Analyticsのサイクル〜
データ分析プロジェクトの王道的な話
- データ分析に関わる人が、色々な場所で何度も繰り返し話をしている内容
- もし「聞き飽きた」というなら、一言一句覚えてね、というくらいのレベルで大事な内容
データ分析プロジェクト失敗の2大原因
- (上記の画像でいう)Get Dataからはじめてしまう
- 例:「売上データがあるからとりあえず分析して」
- Act(Share)した後、「面白かったね」で終わってしまう
- そこには何の意味もない
- 目的(Task)がないと、意思決定できない
- データ分析の作業が難しくて挫折する
- 例:「ツールの使い方がわからない/難しい」→「プロジェクトが途中頓挫」
- Tableauはそれが簡単にできる(ことを目指して作られている)
- Tableauは「後での変更」が簡単にできる
- ビジュアルを変更する
- データを変更する
- 反復で何度もできる
- データ分析プロジェクトは必ず反復が発生する
- 例:「ツールの使い方がわからない/難しい」→「プロジェクトが途中頓挫」
- 「何のための分析なのか」「誰のために分析するのか」を考えるのがとても大事
- 今の時代は、Tableauに限らず、便利なツールがたくさんある
- 上記のことを踏まえて取り組めばデータ分析は可能
世界を分解する〜Preattentive Attribute〜
記憶とプロセス
- Sensory Memory(感覚記憶)
- 非常に短時間の記憶
- 記憶というより、反射的なもの
- 意識されない
- 外部から刺激を受けて、意味を理解せず、1秒程度持続する記憶
- Short-term Memory(短期記憶)
- 数十秒間程度覚えておくことができる記憶
- たくさんのことを記憶することはできない
- 要するに容量が少ない
- 7個前後が限界
- そのかわり、すぐに引き出すことができる
- ここに無駄な事を置いておくと、良い事を考えることができない
- Long-term Memory(長期記憶)
- 非常に長い間覚えておくことが出来る記憶
- 何十年も覚えておくことができる
- 容量も膨大
- 大量の情報を記憶することができる
- 非常に長い間覚えておくことが出来る記憶
- Tableauが焦点を当てているのはSensory MemoryとShort-term Memory
- (閲覧者の) Sensory Memoryが上手く使われるようになっているVizだと、Short-term Memoryを有効活用できる
- 良い事例としてカレンダーが挙げられる
- 予定はスマホ等に記憶させておく
- 自分が記憶しておく必要は無くなる(スマホを見る、通知が来る、等で予定を確認できるため)
- 自分が記憶しておく必要は無くなるため、Short-term Memoryを予定そのものに対して使うことができる
- 予定はスマホ等に記憶させておく
人間の知覚と認識
- 田中氏は、棒グラフを「データの長さ」としか呼ばない
- 田中氏は、線グラフを「データの位置と方向を表現したもの」としか理解してない
- 「棒グラフを作ってる」「折れ線グラフを作ってる」と思ってない
- 視覚属性の説明用/Preattentive Attribute for Visual Analytics Program
- When Visualizing Data, Ask Yourself: Where Are Your Eyes Drawn? | Tableau Software
データのタイプ
- こういったこと(上記スライド)をおさえておく
- ビジュアルを考える時は、必ずそのビジュアルの「意図」を考える
世界はVisualだからデータもVisualで理解する
- 例えば、 文字は自然にないもの(人間が作ったもの)
- データを理解するのに向いているのは、自然と同じVisualでやったほうがいい
- 色について
- 色とデータの意味を考える(例外はある。中国は赤がいい意味など)
- 要するに見る側のコンテキストを考える
- (上記のスライドを見ると)写真の色とTableauの凡例の色(の遷移)が同じだということに気づく
- Tableauの色は非常によく考えられて設定されている
その他
小さな画面(キャンバス)に世界を描く
- Vizの縦横比を意識する
- 比較対象がないと意味がない
- 1つだけの棒グラフに意味はない
- フィルタを頻繁に使用して絞り込んでるとよく発生する
- 1つだけの棒グラフに意味はない
自分の記憶を疑い、信じる〜人が得意なこと
- 点的なものを記憶する必要はない
- まだ紙や文章がなかった昔から、語り部の伝承等の口伝という形で、現代まであらゆる物語が伝わっている
- 線的な流れを覚えることは(人間)は得意である
- つまり、Visualizeも線的な流れ(ストーリー)が大事
Tableauは言語である
- 「Tableauで表現できることはどのくらいですか?」と聞かれた時、Tableau社は「Infinite」と回答している
- 言語で表現できることに際限が無いことと同じ
まとめ
まさに「極める」という名にふさわしいセッションだったと思います。
データから何かを伝える時、必要なのは、難しい機能や技術を使うことではないということ。また、伝える時は文字ではなく自然と同じ形にすること。これらを意識しつつ、ひたすら何度もビジュアライズを繰り返していくことが、極めるということなのだと思いました。ビジュアライズに王道なし。